見積もりの出し方──「ちょっと直して」が終わらない人へ
1件目が取れました。そして、その直後に必ず来るのが見積もりです。
ここを曖昧にしたまま受けると、作業量だけが膨らみます。「ちょっと直してもらえますか」が10回続いても、金額は最初のままです。それは相手が悪いのではなく、範囲を決めていないこちらの落ち度です。
見積もりは、金額の話ではない
見積書でいちばん大事なのは金額ではありません。どこまでやって、どこからやらないかを、先に文字にすることです。金額はその結果として出てきます。
範囲が書かれていない見積もりは、いくらであっても安すぎます。上限がないからです。
最低限、この6項目
体裁は問いません。メール本文でも構いません。ただしこの6つは必ず入れてください。
| 項目 | 書く内容 | 抜けたときに起きること |
|---|---|---|
| 作業範囲 | 何を作るか。点数と仕様まで | 「ついでにこれも」が増えていく |
| 含まないもの | やらないことを明記 | やって当然だと思われる |
| 修正回数 | 何回まで。超過分の単価も | 終わらない |
| 納期 | 着手日と納品日。素材の受領日を起点に | 素材の遅れの責任がこちらに来る |
| 支払い条件 | いつ、どうやって | 2ヶ月後に振り込まれる |
| 有効期限 | この見積もりはいつまで有効か | 半年後に同じ金額で発注される |
「含まないもの」の書き方
ここがいちばん効きます。実例を出します。
【含むもの】
バナー画像 3点(1080×1080px/JPG・PNG納品)
初稿提出後の修正 2回まで
【含まないもの】
・撮影、および写真素材の購入代行
・原稿(キャッチコピー・本文)のご用意
・入稿作業、広告アカウントへの設定
・サイズ違いの展開(1点あたり別途)
・3回目以降の修正(1回ごとに別途)
意地悪に見えるかもしれませんが、逆です。これを見た相手は「じゃあ原稿はこちらで用意します」と動けます。書いていないと、着手したあとで「原稿もお願いできますか」となり、断りにくくなります。
最後の2行にも注目してください。できないと書くのではなく、追加でできると書く。断りではなく、追加受注の入口です。
修正回数を決めないと、何が起きるか
修正が無制限だと、だいたいこうなります。
- 1回目:方向性の確認。これは当然
- 2回目:細部の調整。ここまでは普通
- 3回目:「やっぱり最初の案のほうが良かったかも」
- 4回目:社内の別の人が見て、別の意見が出る
- 5回目以降:決裁者が変わる、季節が変わる
3回目から先は、たいていこちらの作業の問題ではなく、相手の社内が決まっていないことが原因です。回数を決めておくと、その事実が相手にも見えます。「あと1回で確定させましょう」と言えるのは、最初に2回と書いてあるからです。
金額の決め方
相場を調べるより先に、自分の下限を決めてください。順番はこうです。
- 月にいくら必要かを決める(生活費に、納税分を足す)
- 月に何時間使えるかを数える。前に書いたとおり、まず実測です
- 割ると、1時間あたりの下限が出る
- 案件にかかる時間を見積もって、掛ける
ここで出た数字より安い仕事は、受けるほど生活が苦しくなります。相場より安いかどうかではなく、自分の下限を割っているかどうかで判断してください。
見積もりの時間を、作業時間に入れる
打ち合わせ、素材の受け取り、確認の往復、請求書の作成。これらは全部あなたの時間です。制作時間だけで計算すると、実際の時給は半分になります。制作時間に1.5を掛けるくらいが、最初の目安としては現実的です。
相手が「高い」と言ってきたとき
値下げで応じないでください。範囲を減らして、金額を下げます。
ご予算に合わせるなら、3点を2点に減らすか、修正を1回までにする形でしたら◯◯円でお受けできます。
点数と修正回数はそのままで金額だけ、というのは難しいです。
これを言えると、単価が守られます。同じ仕事を安くやると、その金額があなたの定価になります。一度下げた金額を戻すのは、最初から断るより何倍も大変です。
やってはいけないこと
- 口頭だけで進める。メール1通でいいので、範囲と金額を文字にして送る。あとで揉めたとき、文字がないほうが負けます
- 「だいたいこのくらいで」で着手する。だいたいは、必ず相手の期待値のほうに寄ります
- 相手の予算を聞かずに金額を出す。先に聞いていいです。「ご予算の目安はありますか」は失礼ではありません
- 追加作業を無料でやる。1回やると、それが標準になります。金額は取らなくても「本来は別料金です」とは伝えること
次回予告
見積もりが通って、納品まで終わりました。次は2件目以降をどう作るかです。新規を探し続けるのか、同じ相手から継続でもらうのか。ここで進む方向が分かれます。継続案件に変える言い方と、そのタイミングを書きます。
あわせて読む:最初の1件をどう取るか
応募の数字を、実測で見直す
ここに書いたことを、自分のクラウドソーシングの応募ログ1,134件で数え直しました。感覚ではなく実測だけの記事です。
提案が通らないとき、応募先を疑ったほうがいい1,022件を数えたら、案件のジャンルで契約率が3倍違いました。 安く提案しても、返信率は上がらなかった提示額666件。上限超えと上限以内で、返信率の差は0.2ポイントでした。 発注者は、どこを見て選べばいいのか737人分のプロフィール。評価スコアの中央値は4.94で、選別には使えません。 有料教材受注した案件のほうが、競合が多かった|応募ログ1,134件の全数集計集計に使った全データ、案件を落とす基準4つ、提案文の生成プロンプト、応募管理シートまで収録しています。