「イシュー度 × 解の質」のマトリクス──スキルアップだけでは単価が上がらない理由
ここまで「イシュー」と「仮説」の話をしてきました。今回は、この連載でいちばん残酷な図を紹介します。
『イシューからはじめよ』の核心である、2軸のマトリクスです。
縦軸に「イシュー度」、横軸に「解の質」
2つの軸で仕事を分類します。
- イシュー度=その問いに答える価値がどれだけ大きいか
- 解の質=その問いに対して、どれだけ質の高い答えを出せているか
この2軸で、4つの領域ができます。
- 左下:イシュー度も解の質も低い。何も生まれない
- 右下:イシュー度は低いが、解の質は高い。丁寧に作った、誰でもできる仕事
- 左上:イシュー度は高いが、解の質が低い。方向は合っているが形にできていない
- 右上:どちらも高い。ここだけが、価値になる
スキルアップは「右へ」動く行為でしかない
ここが今回いちばん言いたいところです。
新しいツールを覚える。表現の引き出しを増やす。作業を速くする。これらは全部、横軸(解の質)を右に動かす行為です。縦軸には1ミリも影響しません。
つまり、イシュー度の低い仕事をどれだけ高品質に仕上げても、行き着く先は右下です。
右下がどういう場所か、具体的に書きます。
誰でも作れるバナーを、誰よりもきれいに、誰よりも速く作れる人。
この人の単価は上がりません。上がらない理由は簡単で、比較されるからです。同じことができる人が他にもいる以上、価格でしか差がつきません。丁寧さは、値上げの理由になりません。
右下から抜け出せない人の共通点
右下で止まっている人には、はっきりした共通点があります。
来た仕事をそのまま受けている
依頼された内容を、依頼されたとおりに作る。品質は高い。でも問いを選んでいないので、イシュー度は相手が決めた高さのままです。
「もっとうまくなれば」と思っている
単価が上がらない理由をスキル不足だと考えて、また横軸を右に動かそうとする。これが第2話で書いた犬の道です。横に動いても、縦は変わりません。
縦軸を上げる、たった一つの方法
縦軸は、腕を磨いても上がりません。上げる方法は1つだけです。
受ける前に、問いを選び直す。
実務ではこうなります。
- 「バナーを5本お願いします」→ 「その5本は何のためですか。目的次第で本数も内容も変わります」
- 「トップページを新しくしたい」→ 「今、いちばん困っているのはどこですか」
- 「安くしてほしい」→ 「予算に合わせて、効果が出る順に絞りましょう」
受注の前に一度、問いを持ち上げる。この一手間だけが、縦軸を動かします。
ただし、いきなり右上は狙えない
誤解しないでほしいのは、解の質が低くていいわけではないということです。
イシュー度の高い問いを引き受けたのに、形にできなければ左上で終わります。これは信用を失う一番危ない場所です。
順番はこうです。まず解の質を一定まで上げる。そのうえで、問いを選ぶ目を持つ。制作力は前提で、そこから先が受注力です。
まとめ
スキルアップは横軸を動かす行為で、単価を決めているのは縦軸です。
丁寧に作った、誰でもできる仕事から抜け出すには、腕を磨くのではなく、受ける前に問いを選び直すしかありません。
次回予告|第5話「ストーリーラインを持て」
次回は、選んだ問いをクライアントに伝えるための話です。
イシュー → 仮説 → 検証 → 解。この流れを筋道立てて示すことを「ストーリーライン」と言います。これを提案書に組み込めるデザイナーは、作業者ではなく戦略パートナーとして扱われます。
実際の提案書に、どの順番で、何を書くのか。構成をそのまま出します。