イシュー思考で、案件単価はここまで変わる──5万円と30万円を分ける「最初の30分」
前回まで、イシュー・仮説・ストーリーライン・検証と積み上げてきました。今回はその全部が金額としてどう出るかの話です。
先に結論を書きます。同じLP1枚で5万円になるか30万円になるかは、受注の入り口で何を話したかだけで決まります。作業の量でも、技術の差でもありません。
ケースA:5万円で終わる会話
クライアント「LPを1枚お願いしたいんですが、いくらですか」
デザイナー「構成にもよりますが、5万円くらいでできます」
クライアント「じゃあお願いします。原稿は送りますね」
この時点で、あなたは「LPを作る人」として値付けされました。
比較対象は、同じく「LPを作る人」です。相手はあなたの隣に別の見積もりを並べています。そうなると差がつくのは価格だけなので、下げるしかなくなります。
ケースB:30万円になる会話
クライアント「LPを1枚お願いしたいんですが、いくらですか」
デザイナー「作る前に伺いたいのですが、いまは何が一番うまくいっていないですか」
クライアント「広告は回してるんですが、申し込みが月3件で止まっていて」
デザイナー「広告のクリックは取れているのに、申し込みが伸びない、ということですか」
クライアント「そうです。クリックは月2,000くらいあります」
ここで問題が入れ替わりました。「LPを作る」から「クリック2,000で申し込み3件をどう増やすか」に変わっています。
後者はLP1枚では終わりません。ファーストビューの訴求、申込フォームの項目数、広告文とLPの言葉のズレ。全部が対象になります。だから金額が変わります。
値上げしたのではありません。解いている問題が違うのです。
入り口で聞くのは、この4つだけでいい
ヒアリングシートを作り込む必要はありません。最初の30分で、これだけ聞いてください。
- いま何が一番うまくいっていないか(イシューの候補が出ます)
- その数字はいくつか(件数・率・金額。何でも構いません)
- それがいくつになれば成功か(ゴールが決まります)
- すでに試したことは何か(同じ提案を出して外すのを防げます)
4つ目を飛ばす人が多いのですが、ここが一番効きます。相手が半年かけて失敗したことを、そうと知らずに提案するのが、信用を落とす一番の近道です。
見積書の書き方も変わる
作業を並べた見積もりは、作業単価で値切られます。
| 作業を売る書き方 | 解決を売る書き方 |
|---|---|
| LPデザイン一式 50,000円 | 申込数改善のための構成設計 120,000円 ファーストビュー制作(3案比較) 80,000円 フォーム改善 50,000円 公開1ヶ月後の数値レビュー 50,000円 |
右側は、1行ずつが「なぜ必要か」を説明しています。削ろうとすると、目的が削れることに相手が気づきます。左側は、ただの数字なので削れます。
「安くしないと取れない」は本当か
結論から言うと、逆です。
安い提案は比較されます。同じものを売っているからです。課題を設定した提案は比較されません。その課題設定を持ってきたのがあなただけだからです。
相見積もりで負け続けている人は、腕が足りないのではなく、比較される土俵に自分から乗っています。
やってはいけないこと
課題を勝手に断定しないでください。「御社の問題はフォームです」と言い切ると、相手は反論できないまま不信感だけ残します。
正しくはこうです。
「クリックは取れているので、原因はLPの中にありそうです。まずフォームの項目数を疑っていますが、いかがですか」
仮説として出して、相手に確認する。これだけで、指摘が押しつけではなく共同作業になります。
まとめ
単価は、腕前ではなく引き受けた問題の大きさで決まります。
「作ってください」を「作ります」で受けている限り、値段は相手が決めます。入り口の30分で問いを設定し直せた人だけが、自分で値段を決められます。
次の相談が来たら、見積もりを出す前にひとつだけ聞いてみてください。「いま何が一番うまくいっていないですか」。それだけで金額が変わります。
次回予告|第8話「SNSで何を投稿すればいいか分からない、の正体」
次回は、この考え方を自分の発信に向けます。
「何を投稿すればいいか分からない」というのは、ネタ切れではありません。イシューが設定できていないだけです。誰の、どの困りごとに答えるのかが決まっていないから、手が止まります。
実際に運用しているアカウントで、リーチ不足からLP流入、予約ゼロまでを分解した記録をそのまま公開します。うまくいっていない数字も含めて出します。