ストーリーラインを持て──提案が通るデザイナーがやっている「順番」の話
前回、「受ける前に問いを選び直す」ことが単価を決めると書きました。今回は、その問いを相手に伝える話です。
どれだけ良い問いを立てても、伝わらなければ提案は通りません。ここで使うのがストーリーラインです。
ストーリーラインとは、筋道のこと
難しい言葉ですが、中身は単純です。
イシュー → 仮説 → 検証 → 解
この順番で話を組み立てる、それだけです。逆に言うと、多くの提案書はこの順番になっていません。
よくある提案書はこうです。
- 会社概要
- 実績
- デザイン案
- 見積
これは「私はこういう者です」という自己紹介であって、相手の問題の話が一度も出てきません。だから比較されて、最後は金額で決まります。
ストーリーラインで組んだ提案書の構成
順番を変えるだけで、同じ内容がまったく違って見えます。実際に使える構成を出します。
1. 御社の現状(イシューの提示)
ヒアリングで聞いたことを、こちらの言葉で整理して返します。
「問い合わせは月◯件ありますが、そのうち商談に進むのは◯件。数ではなく質が課題だとお見受けしました」
ここで相手が「そうなんです」と言ったら、その時点でほぼ決まります。課題を正しく言い当てられた人に、人は仕事を頼みます。
2. なぜそうなっているか(仮説)
「サイト上に価格の目安がないため、予算が合わない方からの問い合わせが混ざっていると考えています」
断定しません。「考えています」で構いません。仮説だと明示するほうが誠実で、しかも外れたときに軌道修正できます。
3. だから、こうします(解)
「価格帯とサービス範囲をトップに出し、問い合わせフォームの前に条件を提示する構成にします」
ここで初めてデザイン案を見せます。順番が大事です。先に案を見せると、好き嫌いの話になります。後に見せると、根拠の話になります。
4. どう確かめるか(検証)
「公開から1ヶ月後に、問い合わせ数と商談化率を一緒に見せてください。狙いどおりか確認して、次の一手を決めましょう」
これを最後に入れておくと、納品が終わりではなく、関係の始まりになります。
この構成が効く理由
理由は1つです。相手の頭の中の順番と同じだからです。
クライアントは「困っている → なぜだろう → どうすればいい → 効果はあるのか」の順で考えています。そこに同じ順番で答えを返すと、話がまっすぐ入ります。
逆に、実績とデザイン案から始まる提案は、相手の思考の順番を無視しています。だから「検討します」で終わります。
相見積もりで負けなくなる
もう一つ、実務的な効果があります。
相見積もりの場で、他社が「デザイン案と金額」を出してきたとき、こちらが「課題の整理」から入ると、比較の土俵がずれます。相手の担当者は社内でこう説明することになります。
「A社は安いです。でもB社は、うちの課題をいちばん理解していました」
この一言が出た時点で、価格勝負から降りられます。
まとめ
イシュー → 仮説 → 検証 → 解。この順番で話すだけで、提案の意味が変わります。
作るものは同じでも、順番を変えるだけで「作業者」から「相談相手」になれます。今日から次の提案書で試せる、いちばん費用のかからない改善です。
次回予告|第6話「デザインの良し悪しを”感覚”で語るな」
次回は、ストーリーラインの最後にあった検証の話を掘り下げます。
「なんかいい感じですね」で終わる納品と、「CVRが◯%上がりました」で終わる納品。この差が、リピートの有無を決めています。
CVR、CTR、直帰率、ABテスト。名前は知っていても、どれをいつ見ればいいのか分からない人は多いはずです。デザイナーが最低限おさえるべき指標だけに絞って、実務での見方を書きます。