マグカップを置いた机でノートパソコンを使う男性

最初の1件をどう取るか──実績が薄いときの応募文

8つの入口を全部見てきました。ここからは、選んだあとの話に入ります。まずは最初の1件です。

ここがいちばん遠い。2件目より3件目より、1件目だけが極端に難しい。理由がはっきりしているので、先にそこから書きます。

なぜ1件目だけ極端に難しいのか

発注する側の頭の中を、そのまま書きます。実績のない人に頼むとき、この3つが不安です。

  • 納期を守るか。守らないと、自分の予定が全部ずれる
  • 途中で消えないか。連絡が途絶えるのがいちばん困る
  • 指示が通じるか。何度も説明し直すなら、自分でやったほうが早い

注目してほしいのは、この3つに「うまいかどうか」が入っていないことです。実績は「この人は大丈夫そうだ」と思わせる材料のひとつでしかありません。

ということは、実績がないなら、別の材料で同じ不安を減らせばいい。1件目を取るというのは、そういう作業です。

応募文で見られているのは3つだけ

何十件も応募文を受け取る側は、1通に10秒もかけません。見ているのはここです。

  • この人はうちの募集を読んだか
  • できないことを、できると言っていないか
  • 連絡が返ってきそうか

逆に言えば、この3つが伝われば、実績が薄くても返事は来ます。

通らない応募文

実際によくある形です。

はじめまして。〇〇と申します。

これまでデザインの勉強をしてきました。まだ実績は少ないですが、責任感を持って丁寧に対応いたします。

ぜひ一度チャンスをいただけませんでしょうか。よろしくお願いいたします。

落ちる理由は3つあります。

  • 相手の募集が1行も出てこない。誰にでも送れる文=誰にも刺さらない
  • 「丁寧に対応します」は情報がゼロ。全員がそう書きます
  • 「チャンスをください」は、相手に判断を丸投げしている。相手は判断材料が欲しいのであって、意欲を測りたいわけではありません

通る応募文の型

やることは、さっきの不安を1つずつ潰すだけです。5つのブロックで組みます。

御社のInstagram、直近1ヶ月ぶん拝見しました。商品写真の投稿が中心で、保存数を伸ばしたいというご意向だと理解しています。

私が担当できるのは、投稿画像の制作(1回あたり3〜5枚)です。撮影と原稿のご用意は御社側でお願いする前提です。

近い内容で作ったものを1点添付します。同じ商材を想定して、1枚目で目を止める構成にしています。

初回は3営業日でお出しできます。連絡は平日9時〜21時、原則2時間以内に返信します。

動画の編集は経験がないため、今回はお受けしません。必要でしたら画像のみでのご提案になります。

この文が効いているのは、上手いからではありません。相手が確認したいことが、確認したい順に書いてあるからです。

ブロック潰している不安
相手の媒体に触れる読まずに送っていないか
できる範囲を限定する指示が通じるか
近いサンプルを1点どの程度作れるのか
納期と連絡可能な時間消えないか・納期を守るか
できないことを書くこの人は正直か

最後のブロックを入れられる人は、ほとんどいません。できないことを先に言う応募文は、それだけで浮きます。「なんでもやります」より、はるかに信用されます。

実績がゼロのときに、何を出すか

架空案件のサンプルを1点だけ作る

実在する商品やお店を1つ決めて、勝手に1点作ります。3時間で切り上げてください。完成度より、「同じ条件で他人と比べられる」ことのほうが価値があります。10点並べる必要はありません。応募先に近い1点があれば足ります。

前の仕事の経験を、翻訳して出す

接客をしていたなら「お客さんが何で迷うかが分かる」。事務をしていたなら「締め切りのある作業に慣れている」。関係ない経歴に見えても、さっきの3つの不安のどれかを減らせるなら、それは材料です。

小さく分けて受ける

「LP1枚」ではなく「ファーストビューだけ」。「動画1本」ではなく「カット編集だけ」。相手のリスクが下がるので、1件目としては通りやすくなります。ここで信用ができれば、2件目から範囲が広がります。

単価を下げていいのは1件目だけ

実績づくりのために初回を安く受けるのは、判断としてはありです。ただし条件があります。安いのは今回だけだと、最初に書いておくこと。

初回は実績としてお受けしたいので、今回のみ〇〇円でお引き受けします。2件目以降は通常料金の〇〇円でのご相談とさせてください。

これを書かずに安く受けると、その金額があなたの定価として記憶されます。あとから上げるほうが、最初から適正額で断られるより何倍も大変です。

20件出して1件、が普通

落ちるのが普通です。1回落ちて「向いていない」と判断するのは早すぎます。だから、落ちた記録を残してください。応募のたびに、この4つだけ書けば十分です。

記録することなぜ
応募先と募集内容どんな案件で反応があるか分かる
添付したサンプルどのサンプルが効いているか分かる
提示した金額通る価格帯が見えてくる
結果と、返信があったかどうか返信すら来ないなら、応募文のほうに問題がある

10件たまると傾向が出ます。返信ゼロなら応募文、返信は来るが受注ゼロなら金額かサンプル。どこを直せばいいかが、記録がないと永遠に分かりません。

やってはいけないこと

  • 同じ文を一斉に送る。受け取る側は、それが分かります
  • できないことを黙る。着手後に発覚したときの損失は、断るより大きい
  • 2件目以降も下げ続ける。忙しいのに残らない、という状態に直行します
  • 「勉強させてください」と書く。相手は学校ではありません。お金を払って解決したい問題があるだけです

次回予告

1件目が取れたあと、すぐ次の壁が来ます。見積もりです。いくらと言えばいいのか、何を含めて何を含めないのか、修正は何回までなのか。ここを曖昧にしたまま受けると、作業量だけが膨らみます。次回は見積書の中身を、項目ごとに分解して書きます。

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