実績の見せ方──名前も画面も出せない案件を、どう書くか
「実績を見せてください」と言われて、手が止まる。作った本数は増えているのに、見せられるものが1つもない。守秘義務のある案件が続くと、実績が積み上がっているのに、外からは何も見えないという状態になります。
前回は、単発を継続に変える話をしました。今回はその先で必ず起きる「見せられない」問題です。結論から言うと、実績はクライアント名と完成物がなくても書けます。むしろ、そちらのほうが読み手には効きます。
「見せられない」には2種類ある
- 契約で禁止されている。秘密保持の条項が入っていて、案件そのものに触れられない。
- 禁止かどうか、自分でもわかっていない。実はこちらのほうが多い。何も言われていないので、なんとなく出せない気がしている。
2つ目なら、確認するだけで解決します。勝手に載せるのは論外ですが、聞かずに諦めるのも同じくらいもったいない。契約書に秘密保持や成果物の扱いについての記載があるかをまず見て、書いていなければ相手に一言聞いてください。
先日納品したバナーについて、実績としてポートフォリオに掲載してもよいでしょうか。御社名を出さず、業種と制作物のみの記載でも構いません。差し支えがあれば掲載は見送ります。
逃げ道を先に用意しているので、相手も答えやすくなります。断られてもマイナスにはなりません。この一文を送れるかどうかで、1年後に手元に残る実績の数が変わります。
名前も画面も出せないときに書く4つのこと
| 書くこと | 書き方の例 |
|---|---|
| 相手の輪郭 | 従業員10名ほどの地域密着の飲食店 |
| 困っていたこと | 予約ページまでは来るのに、そこで離脱していた |
| 自分が決めたこと | 写真を減らし、予約ボタンを画面の上部に固定した |
| どうなったか | 予約完了までの離脱が目に見えて減った |
社名も画像も1つも出ていませんが、読んだ側には「この人は考えて作っている」が伝わります。逆に、きれいな完成画像だけが並んでいるポートフォリオからは、これが一切伝わりません。作れることは、もう誰でも証明できるからです。
数字が手元にないとき
成果の数字は、たいてい相手側にあって自分は見られません。そのときは数字を作らないこと。「売上2倍」と書きたくなりますが、確認できないことを書いた時点で、その実績は全部信用を失います。
代わりに、自分の側で確実に言えることを書きます。「同じ依頼が翌月も続いた」「その後3ヶ月、月2本のペースで継続した」。これは自分の記録だけで書けて、しかも成果が出たことの証拠として十分に強い。続いているという事実ほど分かりやすい評価はありません。
見せられる仕事を、意図的に混ぜる
それでも、目で見えるものが1つもないのは不利です。だから、受ける案件の中に公開できる案件を意識的に混ぜます。掲載可の条件で受ける、自主制作を1本混ぜる、知り合いの店のものを実費で作る。どれでも構いません。
大事なのは、そのときに完成物だけでなく、上の4つを一緒に書き残しておくことです。あとから思い出して書こうとすると、必ず「きれいに作りました」しか出てきません。
今日やること
直近で納品した案件を1つ選んで、上の表の4行だけ書いてみてください。10分で終わります。それがそのまま、次の応募文に貼れる実績になります。
次回
第10話は断り方と、値上げの切り出し方です。仕事が増えてくると、次に困るのは「受けたくない依頼をどう断るか」と「今の相手にどう値上げを伝えるか」。関係を壊さずに条件を変える言い方を、実際の文面で扱います。
応募の数字を、実測で見直す
ここに書いたことを、自分のクラウドソーシングの応募ログ1,134件で数え直しました。感覚ではなく実測だけの記事です。
提案が通らないとき、応募先を疑ったほうがいい1,022件を数えたら、案件のジャンルで契約率が3倍違いました。 安く提案しても、返信率は上がらなかった提示額666件。上限超えと上限以内で、返信率の差は0.2ポイントでした。 発注者は、どこを見て選べばいいのか737人分のプロフィール。評価スコアの中央値は4.94で、選別には使えません。 有料教材受注した案件のほうが、競合が多かった|応募ログ1,134件の全数集計集計に使った全データ、案件を落とす基準4つ、提案文の生成プロンプト、応募管理シートまで収録しています。