なぜ頑張っているのに単価が上がらないのか──デザイナーが最初に間違える「問い」の話
スキルは上がった。作るものの質も、去年より確実に良くなっている。それなのに単価が変わらない。むしろ、数をこなさないと同じ売上に届かない。
もし心当たりがあるなら、問題は努力の量ではありません。解こうとしている「問い」がずれている可能性があります。
「きれいに作ること」は、あなたの問いでしかない
デザイナーの多くは、仕事の目的を無意識にこう置いています。
- 余白とジャンプ率を整える
- トレンドに合った配色にする
- 競合より見栄えのするものを出す
どれも大事です。でも、これは制作の質を上げるための問いであって、クライアントがお金を払っている理由ではありません。
クライアントが本当に答えを出したいのは、たいていこの一行です。
売上を上げたい。集客を増やしたい。採用の応募を増やしたい。
この2つがずれたまま進むと、何が起きるか。「きれいですね。ありがとうございます」で終わり、次の相談は来ません。納品物に不満があるわけではないのに、関係が続かない。多くの人が経験しているはずです。
イシューとは「今、本当に答えを出すべき問い」
安宅和人氏の『イシューからはじめよ』では、イシューをこう定義しています。
- 本質的である(それが決まると、後の判断が大きく変わる)
- 今、答えを出す価値がある(先送りできない)
- 答えを出せる(手が届く範囲にある)
この3つを満たす問いだけが、取り組む価値のあるイシューです。
デザイナーの仕事に当てはめてみます。「このバナーの配色をどうするか」は、答えは出せますが本質的ではありません。配色が変わっても事業は動かない。一方で「なぜこの商品は検討段階で離脱されるのか」は本質的で、今答えを出す価値があり、そしてデザイナーが手を出せる範囲にあります。
同じ案件でも、どちらの問いを持って座っているかで、出てくるアウトプットも報酬もまったく変わります。
ズレはどこで起きるか──打ち合わせの最初の3分
ずれはたいてい、最初の打ち合わせで起きています。
クライアントが「トップページのデザインを新しくしたい」と言う。ここで多くのデザイナーは、参考サイトの話とトンマナの話を始めます。相手の言葉をそのまま要件として受け取ってしまう。
でも、この依頼の裏側にはたいてい別の事情があります。
- 問い合わせが減っていて、原因が分からない
- 競合のサイトが新しくなって、社内で見劣りを指摘された
- 採用の応募が来ないので、会社の見え方を変えたい
この3つは、必要なデザインがまったく違います。1つ目なら導線とコピーの問題かもしれず、そもそもトップページを直しても解決しません。
ここで「なぜ今、作り変えたいと思われたんですか」と一言聞けるかどうか。この一言があるかないかが、作業者と相談相手を分けています。
自分のイシューを見つける3つの質問
難しいフレームワークはいりません。案件が来たとき、この3つを自分に聞いてください。
1. この人は、何が起きたら「やってよかった」と思うのか
納品物ではなく、納品の3ヶ月後に起きていてほしいことを想像します。ここが言語化できないうちは、要件が固まっていないのと同じです。
2. その状態を邪魔しているものは何か
デザインが原因とは限りません。価格かもしれないし、掲載している情報が足りないだけかもしれない。デザイン以外に原因がありそうなら、それを言うほうが信用されます。
3. その中で、自分が今すぐ答えを出せるのはどれか
全部を引き受ける必要はありません。手が届く範囲を1つ選んで、そこに集中する。それがこの案件のイシューです。
まとめ
頑張っているのに結果が出ないとき、足りないのはたいていスキルではありません。解くべき問いが違うだけです。
「きれいに作る」から「何を解決するか」に問いを置き換えると、打ち合わせでの会話が変わり、提案の中身が変わり、結果として単価が変わります。順番はいつもこの通りです。
次回予告|第2話「犬の道を歩いていないか」
次回は、多くのデザイナーが良かれと思ってやっている「とりあえず手を動かす」という最悪の戦略について書きます。
スキルを増やす。ポートフォリオを増やす。安い案件をこなす。どれも努力なのに、なぜ成果につながらないのか。『イシューからはじめよ』で「犬の道」と呼ばれるこの遠回りを、デザイナーの実例に置き換えて分解します。
心当たりのある方ほど、次回はしんどい回になると思います。