パソコンに向かって作業する様子

「犬の道」を歩いていないか──デザイナーが良かれと思ってやる5つの遠回り

前回、「解くべき問いがずれていると、どれだけ頑張っても結果は出ない」という話を書きました。今回はその続きです。

ずれた問いを持ったまま努力を続けると、人は必ず同じ道に入ります。『イシューからはじめよ』では、これを「犬の道」と呼んでいます。

犬の道とは、量で解決しようとすること

犬の道の定義はシンプルです。

イシュー度の低い作業を、大量にこなすことで成果に近づこうとする道。

やっかいなのは、これが努力の形をしていることです。サボっているわけではない。むしろ人一倍動いている。だから周りも本人も、間違っていることに気づけません。

そして、この道はほとんどの場合、途中で燃え尽きて終わります。

デザイナーが陥る「犬の道」5つ

1. スキルを増やし続ける

Figmaを覚えた。次はコーディング。その次はWebflow、動画編集、生成AI。

新しいスキルを覚えている間は、前に進んでいる感覚があります。でもできることが増えても、単価は自動では上がりません。上がるのは「単価の高い仕事を取れるようになったとき」だけです。この2つは別のことです。

スキルを増やす前に、今持っているスキルで解ける問題のうち、一番高く売れるものは何かを考えたほうが早い。

2. ポートフォリオを増やし続ける

作品数が足りないから仕事が来ない、と考えて制作点数を増やす。

でもクライアントは作品数を数えていません。見ているのは「自分と同じ悩みを解いた事例があるか」だけです。20点のバラバラな作品より、業種と課題が近い3点のほうが強い。

増やすなら、点数ではなく1件あたりの説明を増やしてください。何を課題と捉えて、なぜその形にしたのか。それが書いてあるだけで、同じ作品が別物に見えます。

3. 安い案件をこなして実績を作る

最初はしかたない、という考え方はあります。問題は抜け出す条件を決めていないことです。

「5件やったら値上げする」と決めていないと、5件が20件になり、気づけば安い仕事で予定が埋まって、単価の高い案件を取りにいく時間がなくなります。安い仕事の本当のコストは、報酬の低さではなく、時間を奪われることです。

4. コンペと単発案件を追い続ける

コンペは、選ばれなければ 作業時間がまるごとゼロになる仕組みです。しかも毎回ゼロから始まるので、経験が積み上がりません。

同じ時間を、既存クライアントへの追加提案に使ったほうが、成約率も単価も比較になりません。

5. SNSの投稿数を増やす

毎日投稿しているのに問い合わせが来ない。これも典型的な犬の道です。

投稿が足りないのではなく、誰の何を解決する人なのかが伝わっていないのが原因であることがほとんどです。ここは第8話で詳しく扱います。

なぜ犬の道に入ってしまうのか

理由ははっきりしています。手を動かしているほうが、考えているより楽だからです。

「何を解くべきか」を考える時間は、成果が目に見えません。不安になります。それに比べて、バナーを1本作れば1本ぶん前に進んだ気がする。

でも、間違った方向に100歩進んでも、正しい方向の1歩には勝てません。

犬の道から降りる方法

やることは1つだけです。手を動かす前に、この質問に答えてください。

これをやり切ったとき、何が変わっているのか。

答えが出ないなら、それは今やるべきことではありません。「なんとなく良さそうだから」で始めた作業が、犬の道の入り口です。

もう一つ、実務的なコツを書いておきます。週に1回、自分がやった作業を「これは何を変えたか」で並べ直してみてください。何も変えていない作業が並んでいたら、その週は犬の道を歩いています。気づけば戻れます。

まとめ

スキルを増やす、ポートフォリオを増やす、安い案件をこなす。どれも努力ですが、イシュー度が低い作業は、積み上げても成果になりません。

大事なのは量を減らすことではなく、取り組む問いを選び直すことです。

次回予告|第3話「仮説がないデザイナーは、ただの作業者」

次回は、イシューの次に来るもの――仮説の話です。

「このバナーは、こういう理由で成果が出るはずです」と言える人と、「言われたので作りました」の人。この差は納品直後には見えません。差が出るのはその次です。

仮説のない制作は検証できない。検証できないから改善できない。改善できないから、次も同じ精度で作るしかない。再現性がゼロのまま、ずっと運任せで仕事をすることになります。

提案の場で仮説をどう言葉にするか、具体的な言い回しまで書きます。

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