デザインの良し悪しを「感覚」で語るな──デザイナーが最低限おさえる4つの指標
前回、提案は「イシュー → 仮説 → 検証 → 解」の順番で組むと書きました。今回はその最後、検証の話です。
ここが、リピートされるデザイナーとされないデザイナーを分けています。
「なんかいい感じですね」で終わる納品の問題
納品してクライアントが喜んでくれた。感謝もされた。それなのに、次の依頼が来ない。
原因は、成果が確認されていないからです。
感覚で褒められた仕事は、感覚で忘れられます。「あのデザインで数字がこう変わった」という事実が残っていないと、社内で次の予算を取る理由が作れません。担当者はあなたを気に入っていても、上司を説得する材料を持っていないのです。
デザイナーが最低限おさえる指標は4つでいい
アナリティクスを全部覚える必要はありません。この4つで十分です。
1. CVR(コンバージョン率)
訪問した人のうち、何%が申し込み・問い合わせに至ったか。制作物の成果を語るとき、最終的にここに帰着します。
目安として、1%が2%になれば売上は倍です。「見た目を変えた」ではなく「CVRが1.8%から2.4%になった」と言えるかどうかで、次の見積もりの通り方が変わります。
2. CTR(クリック率)
バナーやボタンが、表示された回数のうち何%クリックされたか。
バナー制作を受けている人は、これだけは必ず追ってください。「AとBを作って、Bのほうがクリック率が高かった」と言えるだけで、単価の話が変わります。
3. 直帰率・離脱ページ
どこで人がいなくなっているか。仮説を立てる材料として、いちばん役に立ちます。
「料金ページで離脱が多い」と分かれば、直すべき場所が決まります。ここが分からないまま全体を作り直すのが、一番もったいない仕事の仕方です。
4. 滞在時間
読まれているか、それとも開いただけか。コンテンツ系のサイトでは、CVRより先にここが動きます。
ABテストは、そんなに大げさなものではない
ABテストと聞くと専用ツールが必要に思えますが、実務ではもっと素朴にやれます。
- 広告バナーを2種類入稿して、2週間まわして比べる
- メールの件名を2パターン送って、開封率を比べる
- ボタンの文言だけ変えて、1ヶ月ごとに比べる
大事なのは、一度に1箇所しか変えないことです。色も文言も配置も同時に変えると、何が効いたのか分からなくなります。分からない結果は、次に活かせません。
数字がもらえないときはどうするか
「アナリティクスは見せてもらえない」というケースは実際に多いです。その場合はこう伝えてください。
「数字を拝見できると、次のご提案の精度が上がります。閲覧権限だけでも共有いただけませんか」
それでも難しければ、クライアント自身が持っている数字を聞くだけでも構いません。「先月の問い合わせは何件でしたか」で十分です。厳密さより、振り返りの習慣を作ることのほうが大事です。
数字で語ると、何が変わるか
変わるのは3つです。
- 提案が通りやすくなる:根拠のある話は、社内稟議を通しやすい
- 単価が上げやすくなる:成果が見えていれば、値上げが投資の話になる
- 関係が続く:振り返りの場が、次の相談の場になる
数字を出す目的は、自分を証明することではありません。クライアントが社内で戦うための武器を渡すことです。ここを勘違いすると、数字自慢になって嫌われます。
まとめ
デザインの良し悪しを感覚で語っている限り、仕事は感覚で切られます。
CVR・CTR・直帰率・滞在時間。この4つを知っているだけで、提案の説得力は変わります。そして「1ヶ月後に一緒に見ましょう」の一言が、次の仕事を連れてきます。
次回予告|第7話「イシュー思考で、案件単価はここまで変わる」
次回は、ここまでの話が実際の金額としてどう出るかを書きます。
同じLP1枚でも、「作ってください → 作りました → 5万円」で終わる場合と、「御社の課題はここですよね → この構成で解決できます → 30万円」になる場合があります。
この差は才能でも経験年数でもありません。受注の入り口で何を話したか、それだけです。実際の会話の流れを、そのまま追いかけます。